待った!ミルクを足す前に 2006:10:04:09:24:04
「母乳が足りていないようなので、ミルクを足しました」
…と、前向きになりながらも、内心後悔や自責の念に駆られている方に、時々お目にかかります。その心中を思うと実に切なくなります。。
で、相手の方が私に心を許してくださっている場合、お話を伺ってみると、中には「本当に母乳の分泌量が充分ではなかった」とは思えないケースもあるのです。
いわゆる『母乳不足感』と呼ばれるものに、陥ってらっしゃるわけです。
母乳でなければいけない!ミルクを飲ませてはいけない!…そういうことは全く思っていません。
しかし、母乳育児に後ろ髪を引かれつつ、
「母乳育児の出来ない、努力の足らないダメな母親」
…などとご自分を責めながらミルク栄養へ徐々に移行していくママが多数いらっしゃるという事実は、決して良い状態とは思えないのです。
『母乳にこだわる事が重要』、という話ではなく、母乳が不足しているかどうかを正しく判断する基準、そして万が一不足していると考えられる場合に、ミルクを安易に足してしまう前にまず出来ること…
そういった情報を手に入れることが、母乳育児を楽しむ上で非常に大切だと思います。
実は、雑誌やパンフレットなどで常識として刷り込まれた“母乳不足の見分け方”というのは、残念ながら判断基準とするには根拠に乏しいものばかりということを、知っておかなければなりません。
+ 母乳のためのチェック項目 +
- 1回の授乳時間が長くなる。(20分以上お乳を離さない)
- 授乳間隔が短くなる。(授乳後1〜2時間以内でまた欲しがる)
- 体重の増え方が少ない。
(2〜3ヶ月頃までは1日平均30g位増えるのが標準) - 授乳時間になってもお乳が張ってこない。
- 赤ちゃんの眠りが浅く機嫌が悪い。
- 便の回数や量が少なくなる。
当てはまる項目があるときは母乳不足が考えられます。
でもすぐにあきらめず、もう一度母乳をあげる努力をしましょう。
…こんな内容の記述をよく目にするかと思います。
小児科や保健センターなどでも、同じような指導をされるケースもあります。
しかし、この6項目の中で、唯一母乳不足の判断基準として正しいのは、実は「6」だけなんです! しかも、この「6」に関しても微妙さがあります。
つまり、これ全部が母乳不足の判断基準となるならば、多くのママが母乳不足の疑いがあることになってしまいます。
そして、これを見たママは、自分のオッパイの調子に自信を失うのです。例え、赤ちゃんがご機嫌で元気がよく、肉付きが良かったとしても……。
上記の「チェック項目」を一つ一つ検証していきますと、
- お腹が空いていれば、赤ちゃんは後乳(「“おっぱい”を知ろう」参照)もしっかり飲みたいので、時間が掛かる。20〜30分はフツウ。
また、赤ちゃんにも色んな性格(タイプ)があり、ゆっくり乳首の感触を楽しみつつ、時間をかけて味わいたい子もいる。 - おっぱいは、食事としての役割だけでなく、間食・精神安定の役割もある。
お腹が空いた時だけでなく、喉が渇いたときに前乳だけ飲んでみたり、怖い・悲しい・痛い・寂しい等の感情に襲われた際に、安らぎを求めておっぱいを欲しがることもある。 - 体重の増え方にも個性がある。
大人でも「食べても太らない人」もいれば、「ちょっとの食事が体重に影響する人」だっているのと同じ。
尚、この問題は飲ませ方(後乳をなるべくしっかり飲ませること・自律授乳ではなく、強引?に頻回授乳)で、充分回避可能。
また、出生から間もなく、生理的体重減少というのがあるのだけど、その減ったところからではなく、出生時の体重から計算する人もいるらしいので注意。 - いわゆる「さし乳」というもので、むしろ“受注生産制が軌道に乗った理想のおっぱい”とも言える。
ここで調べもせずに「ミルクを足すように」なんて言う専門家は、メーカーの回し者か、メーカーの情報を鵜呑みにしているだけなのか…
射乳反射(催乳感ともいいます。吸われたりすると、ジワンジワンとかツンツンとか感じるあれです)も、人によっては自覚がないこともある。 - 母乳不足だけが原因とは考えられない項目。
室温や湿度が不快指数に達していたり、具合が悪かったり、体のどこかが痒かったり、痛かったり、怖い夢を見ていたり。
外気浴などの刺激不足や逆に来客などでの刺激過剰、色々なことを赤ちゃんは「泣いて訴える」のだから。 - 1ヶ月も過ぎれば、赤ちゃんはまとめて排泄することが出来るようになるので、ウンチは1日1回、ともすれば1週間に1回がペースの子だっている。
正確には『おしっこで一日に布オムツなら8回以上、紙オムツなら5回以上しっかり濡れていればOK』。
ということになります。
不安になった際には、オムツの様子、赤ちゃんの顔色や様子をよく観察しましょう。
本当に不足しているならば、オムツの濡れ方も足りないばかりか、赤ちゃんも病気ではないのにグッタリ元気がなくなります。泣き方にも力がなくなってくるでしょう。
体重、飲むのにかかった時間、授乳間隔、飲んだ量、そういったマニュアルなどに示された目先の「数字」などにとらわれず、どうぞ目の前の赤ちゃんと、自分の体の声に目を向け、耳を傾けて欲しいと思います。
もし本当に不足しているようであれば、まずは「“おっぱい”を知ろう」の“出すために必要なこと”を実践してみてください。
もしそれでも自己判断に自信がないのなら、昔ながらの助産院・WHO10か条に理解を示している母乳外来や、“ラ・レーチェリーグ”“○○母乳の会”みたいなボランティアサークルなどで直接「おっぱいのプロ」相談に乗ってもらうのがよいでしょう。きっと不安を取り除いてくれるはずです。
※但し、行き先の方々との性格上の相性もあるかもしれません。その点はご了承ください…
赤ちゃんはロボットではありません。一人の「個性を持った人間」です。勿論、その赤ちゃんを育てているあなたも。。マニュアル通りになんていかないのが育児です。
ママ自身が、母乳不足感にがんじがらめになっていたりすると、その不安を取り除く目的で「ではミルクを足してみたら」と勧める先生や保健師・看護師・助産師・栄養士さんも中にはいらっしゃるようです。
不足感にさいなまれた時、先生方が“母乳の分泌量を確保するための方法”を指導して下さったなら、まずは信じて実行してみましょうね。
ミルクはいつでも足すことが出来るんですから……。
中には、「預けて自由に出かけたりしたいので、いずれミルクに切り替えよう」とお考えだったりする方もいらっしゃると思います。
また、職場復帰のために、搾乳も大変だからついでにミルクにしよう、とおっしゃる方も多いかと思います。
ミルク(人工乳)は、現在母乳と同等のものとして扱われていますが、昔に比べれば確かに品質は大幅に改善されたものの、やはり母乳に勝るどころか並ぶところまではきていません。
あくまでも、母乳を得られない赤ちゃんのための代替品である、と私は思っています。
しかも、品質の向上という部分ばかりが強調され、ミルクで育児をした際のリスクは知らされていないのが現状です。
ミルク栄養の歴史は浅く、わずか50年余り。ミルクを飲んで育った場合、勿論普通に成長をしますが、大人になってからどんな影響があるのかどうか、まだ分かっていません。そういう段階なのです。
また、今分かっていることは、ミルク栄養で育った場合、アレルギーになる確率、下痢症などを起こす確率が高くなる、ということ。
そして、ミルクは赤ちゃんがその時その時必要とする免疫を作り出すことが出来ないために、病気の発症率も、母乳で育った場合よりは高くなるでしょう。
例えるなら、ミルクはお薬・非常食のようなもの。
お薬には、大なり小なり“副作用”があります。皆さんは、フツーに健康に暮らしている際に、持病もないのにお薬を常用したりはしないですよね。そして、出来ることならお薬には頼らないで生活をしたいと思うのが自然で当たり前だと思います。
そして、万が一風邪を引いたとしたら、病院や薬局で先生や薬剤師さんの適切な処方のもと、お薬を手に入れるわけです。その際、副作用について、市販薬なら説明書が、医師から処方された場合も説明を受けたりするわけです。(中には、何の説明もしてくれない、なんてお粗末なところもあるようですが・汗)。
治療される側としても、リスクを考慮しつつ、服用することで快方に向かうという恩恵があるので、それを受け入れるわけです。
また、普段生活する中で非常食を常時食卓に出すことはないですよね。
毎日、味を変え品を変え、家族に充分な栄養を摂ってもらえるよう工夫しておられることと思います。
そして、食料を手に入れるのが困難な危機に陥ったときこそ、非常食の出番なのです。命を繋ぐためにとても重要な役割を果たします。
非常食にはバリエーションが限られています。栄養価も片寄るかもしれません。しかし、その場をしのぐためにはとても大切な存在です。
本来、ミルクもそうあるべきだと思うのです。
どんなリスクがつきまとうとしても、母乳を得られない赤ちゃんにとっては、ミルクが命の綱です。
いくら頑張っても不足が解消されないなどの問題がある場合は、迷わず選択しなければなりませんし、現在の日本の就労環境は、乳幼児を抱えた女性には決して優しいとはいえないのも事実で、どんなに知恵を絞っても勤務中に授乳の時間なんて取れないのは当たり前、搾乳を飲ませることすら厳しいというところもザラでしょうから、預かってもらっている間はミルクを活用するのも一つの手だと思います。
リスクがあるということも充分に認識し、選択した場合に果たして生活や母子の健康にとって、今現在以上の恩恵があるのかどうか…という風に検討した上で必要と判断されたのならば、賢く使って頂きたいと思います。
尚、ミルクを選ぶ場合は、どこのメーカーでも品質に大差はありませんので、赤ちゃんが好む味のものを選んであげると良いそうです。(ただ、アレルギー用とか色々あるみたいですけどね??私良く分からんです…)
そして、母乳育児とは、母親の権利であると共に、“赤ちゃんの権利”でもあるということを、頭の片隅に残して頂けたらよいのではないでしょうか。
(2003.06.18 記) 2006.10.04修正・加筆
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