分娩直後と赤ちゃん 2006:10:24:10:09:30
「おぎゃー!」
…と、生まれてすぐの第一声⇒産声。
母親の胎内から産道を通って初めて外へ出て、呼吸をするための大切な第一声です。
これを聞いて、お母さんも、家族も、見守ってくれている医療者の皆さんもホッと一息をついて安心するんですよね。
「元気に生まれてきてくれた…」と。
さて。このとき“赤ちゃん自身”はどんな気持ちで産声をあげているか、想像したことありますか??
私は今までなかったんだけど(^-^;ゞ
では、自分が赤ちゃんのつもりで、想像してみましょう。
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(※『母性を育む』を参考にしています)
約10ヶ月の間、温かくて心地よい羊水の中で、プカプカ無重力を楽しみつつ、どこからか響いてくる優しいお母さんの声を聞き、ウトウトしてみたり、お指をしゃぶってみたり、時にはエイエイっと周りを取り囲む壁を蹴って、お母さんからの反応を楽しんだりしてきたわけです。
しかし、お産の日が近づくに連れて、段々子宮の中も窮屈になってきて、頭も骨盤に固定されて身動きが取れなくなってきます。
そして、ついにその時が来て、子宮の壁が体全体を圧迫し始める――
頭は、その狭い産道を通り抜けるために、自然の仕組みで骨と骨が形を変えるわけですが、それによって、脳は圧迫を受けます。それにより、低酸素にあえぎ、いつ終わるのかさえ分からない苦しみに遭うでしょう。
頭が出ても、今度は肺。体全体を締め付ける圧力はまだまだやむことはありません。
最後、お母さんのいきみで体全体が押し出され、完全に外の世界へ生まれ出るわけですが、まだすぐには呼吸は出来ません。
そこで、初めて大きく空気を吸い込み、吐き出したときに出るのが、産声。
胸が凹んで見えるくらい一生懸命酸素を取り込み、繰り返し呼吸をすることで、徐々に真っ白だった顔が血の気で赤くなってきて…いわゆる「赤ちゃん」と呼ばれるゆえんですね。
ひとたび呼吸が落ち着くと、そこはお母さんのお腹の中とはあまりにも違い、やかましく、眩しく、肌寒く、そして“重力”のある、わずらわしい世界。
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さて。どうでしょう。赤ちゃん、どんな気持ちでこの世に生まれてくるんでしょうか。
「やった〜!これで窮屈から脱出だ〜♪ぷっは〜〜、やっぱりシャバの空気は美味ぇぜ……( ̄ー ̄)ニヤリ。
さ、とっとと新生児室に連れて行きなっ!オレサマは疲れてるんだっ」
…なんて、思っているでしょうか。
この世に生を受けて間もない赤ちゃん。きっと、慣れない外界に戸惑い、不安を抱き、落ち着かず、居心地の良かったお母さんのお腹の中が恋しくて、たまらないのではないかと、今となっては思います……。
さて、小さな小さなその体で人生最初の難関を勇敢にも潜り抜け、この世に生まれ出てきた赤ちゃんに、お母さんとして最初に出来ること…何だと思いますか?どうしてあげたい、と思いますか?
「抱いてやりたい!抱きとめてやりたい!」
そう思いませんか?
「あなたもよく頑張ったね、ママも頑張ったよ。ああ、やっと会えたね!!」
そう言って、やさしく抱きしめてあげたいとは思いませんか?
最初のオッパイ、ここで是非あげましょう。
赤ちゃんもお腹の中で羊水やお指を吸って、練習をしてきています。生まれてすぐの赤ちゃんが、おっぱいを探して口をパクパクさせるんです。生きる本能で。
赤ちゃんは、外界へ出た際の不安定な気持ちを、温かいママの腕の中で安らげることが出来ます。
そして、そこで今までへその緒で繋がっていた二人は、これからはオッパイを介して交流を深るようになるのです。
『WHO 母乳育児を成功させるための10か条』の中でも、生後30分以内におっぱいをあげること、という項目があります。
これには意味があります。
赤ちゃんは、お産によるストレスを受けた結果、分泌された大量のアドレナリンとノルアドレナリンが作用していて、意識を目覚めた状態に保っています。なので、大抵の赤ちゃんは元気にオッパイを吸うことが出来、初乳を飲むことが可能です。
このときわずかに分泌される初乳は、免疫物質が大量に含まれており、赤ちゃんにとって「初めての予防接種」となります。
そして、その記憶がその後の頻回授乳⇒母乳確保につながることになります。
但し、中にはお産の疲れから、吸い付くのに時間の掛かる赤ちゃんもいますから、30分という時間にとらわれず、ゆっくり待ってあげましょう。
出生直後の赤ちゃんを、裸のままで母親が抱く『カンガルーケア』。
最近よく聞くようになってきましたが、これは、産後における“最初の母性スイッチオン!”に有効なのだそうです。
それだけではありません。赤ちゃん自身のストレスが減少し、落ち着きを取り戻す効果、呼吸や脈拍などの生理も早く安定する効果が考えられるというのです。
更に、肌と肌を直接密着させることで、母親の持っている良い常在菌が赤ちゃんの表皮に付着し、自然な細菌による抵抗力もつけられるとか。
柔らかいおっぱいの上に、顔を持たせかけ、お母さんの心音を感じながら、やっと明るさに慣れてきた目の前30センチのところにはお母さんの顔。そして、そこから発せられる、聞きなれた優しい声。
お父さんやお兄ちゃん・お姉ちゃんも一緒に立ち会えたなら、家族でそんなひと時を、1〜2時間過ごします……
……う〜ん、癒される〜〜(笑)。
カンガルーケアとは、70年代末に、南米のコロンビアで低体重出生児の保育器が不足し、裸で抱かせて体温低下を防いだのがそもそもの始まりで、現在は、健康な新生児の場合でも、上記のように色々な効果があることが分かり、産科施設でも取り入れるところが徐々に増えてきました。
私の一人目のお産をした病院では、残念ながら取り入れてはおらず、ご存知の通り、赤ちゃんはすぐに処置室へ連れていかれました。戻ってきた時は、タオルに巻かれて触れることは出来ず、ついさっきまでお腹にいた“自分の子”なのにも関わらず、触ってはいけないモノ…例えるならショーケースに入れられたウン千万円もするような宝石を、ほえ〜っと眺めているような気分でした。
あの時、もし抱いてあげることが出来たなら、離れ離れの二日間、もう少し愛おしさに駆られていたに違いないなぁと、思う今日この頃です。
産後すぐの授乳と、ゆったりのんびりカンガルーケア。お母さんは赤ちゃんに対する愛おしさも増し、赤ちゃんも子宮から生まれ出た後の安らぎの場を確認できる、かけがえのない時間とも言えそうですね(^^)。
(2002.11.24 記)
参考:『母性を育む―ソフロロジー式出産と母乳育児』…日本評論社 岡村博行・著
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