“母乳育児”のスタート 2006:10:24:11:20:00
1995年、ルイス・エクソン博士の研究により、母乳による授乳をしなかった母子の虐待率は、母乳による授乳をした母子の38倍に達した…という結果が明らかになったそうです。
(※この研究に関する資料を探してみましたが、残念ながら日本語サイトで詳しく書いているところが見つけられませんでした。また、一応WEB全体でも検索をしてみましたが、英語に疎い私が見つけられるはずもなく_| ̄|○
どなたか、もし見つけられましたらご一報くださいませ)
アメリカでは、母乳育児を推奨し始めてから、年々虐待率が7%ずつですが減少しているそうです。
勿論これは、母乳での授乳をしないことが虐待や育児放棄に直結する可能性が高い、というわけではないでしょう。
私の解釈としては、いわゆる育児のノウハウを身に付けられずに母親となった人が、ミルクの利点⇒長いこと預けていられる・抱かなくても飲ませられる…というところを乱用し、スキンシップをおろそかにし続けたことによって、保護本能を行動に表せなくなった・子に対する関心が薄れた…ということかなと思っています。
また、母乳という液体をただ与えるだけが大切なのではないと思います。
「私、母乳で育ててるの。」
そうは言っても、授乳時以外は殆ど抱くことがなく、授乳中も常に他のことをしながら、、、という“ながら授乳”では、せっかくの母乳育児の意味がないことになります。
それなら、ミルクを哺乳瓶で与えるとき、いつも目を見て語りかけ、スキンシップを欠かさない育児をしている人のほうがずーっと、ずーっと母子ともに密着度が高いと言えるでしょう。
……はい、ながら授乳してます。胸が痛いです(汗)。
ここでは、今何故母乳か、ではなく、今何故“母乳育児”なのか、について簡単にお話したいと思います。
ミルクの質が改善されてきた今、母乳も同等に『乳児の栄養源』という“物質”としてのみ捉えられている感が否めない昨今ですが、その多くの別な重要性については無視されがちです。
しかし、母乳の中には、まだまだ今の技術ではミルクに補えない栄養分や、沢山の『生きた免疫物質』が含まれ、赤ちゃんに最も適した食事であるとともに、「分娩直後と赤ちゃん」でも述べたように、一番最初に受ける『予防接種』であるとも言われます。
皆さんの記憶にも新しいと思われる、大阪の堺市で起きたO−157事件。
その際、アンケート調査を解析した成績について、感染した子どもに限ると、4ヶ月以上の母乳哺育を受けた子どもには無症状が多く、人工栄養児では血便にまで至る有症状者が多かったそうです。
また、この頃たまたまO−157に感染した妊婦さんがいたそうですが、産後、主治医が母乳からの乳児への感染を心配し母乳を調べたところ、豊富なO−157に対する免疫物質を持っていたのだそうです。
母親を治療後、母体血中の免疫抗体の数値が陰性化した後も、母乳分泌のあった産後2ヶ月までは母乳中に高い数値を表していたとか。
これらの結果から、自然は赤ちゃんを感染から守るために、用意周到な仕組みを準備していてくれくれているようだ
、と『母性を育む』著者・岡村先生は言います。
更に、母乳育児は、ただ単に栄養や免疫物質を与えるだけではありません。上でも述べていますが、母乳さえ与えていればよいというわけではないと思います。。
授乳行為は、繰り返しこちらでも言っている『母性』を“自然に”育てるために、一役買っているのです。
それだけではありません。赤ちゃん自身も授乳行為で視覚・聴覚・臭覚・触覚・味覚の五感全てを満たされます。そして、体いっぱいでママを感じることが出来、ごく自然に信頼関係を深められるということです。
また、授乳の際に分泌される射乳ホルモンで知られるオキシトシンには、
◆直接母親の脳の海馬に作用し、ストレスをより早く解消させる・ストレスに慣れることが出来る
◆育児ストレスによっても容易にキレないで、臨機応変に対応出来る
…という仕組み存在することが明らかになったそうです。
今思えば、私が産後半年ほど経った頃、ダンナが時期的な激務で休日も減らされ、帰りも極端に遅くなった頃、私のイライラは極限に達し、それこそ産後2ヶ月目より再び、「育児ノイローゼ」になりかけたことがあったのですが、久方ぶりにやっと取れた休日一日だけで解消され、その後悪化することがなかったのも、そのおかげかなぁ?と思うような気もします。
児童虐待・放棄が問題の今、根本的問題解決に必要なのは母乳育児、ということは考えられないでしょうか。…勿論、これだけが“防ぐ道”とは言いません。
母乳育児はスキンシップの一つですから、母乳育児が困難ならば、そのほかにできるスキンシップを幼い時期から大切にすることが、お互いの絆を深めるためにも重要だと思っています。
…といった理屈を抜きで、日本では、約7割以上の女性が妊娠中から母乳育児を望んでいるにも関わらず、実際母乳育児実施率はわずか40%あまり(ミルク普及前は8〜9割だったと思われます)。
10人に6人は母乳の出ない体質??そんなことがあるでしょうか。勿論中には「当初からミルクで」という方もいると思いますが、その殆どが
「本当は母乳で育てたかった。けど出ないorこんなに辛いとは…」
という理由からでしょう。
そういったジレンマは、間違いなく子育ての環境に多少なりとも支障をきたしている可能性が考えられます。
中には、産科医や小児科医、保健婦や栄養士などの専門家に相談をしたところ、
「何故そんなに母乳にこだわるのか。ミルクの方が栄養がある。
出ていないかもしれない母乳を吸わせ続けるのは、親のエゴだ。」
といった発言をされた、という話もたま〜〜に見られますが、私たち人間だって哺乳類。哺乳類のメスが自分の子どもを自分の母乳で育てたい、と思うのは何が不自然なんでしょうか。どこがいけないんでしょうか。最後の一言なんて特に、専門家から発せられたとは思いたくないほど、正直悲しいです。
色々な文献を漁っていると、日本の現状がいかに母乳育児の足を引っ張っているかがよく分かります…。
韓国では、40年ほど前までは95%を数えていた母乳育児率が、ここ30年で10数%まで落ち、危機感を覚えた国がそれこそ国家レベルで母乳育児一大キャンペーンを布いて取り組んでいるそうだというのに。
ミルクは、母乳分泌のために必要なポイントをきちんと取り組んだにも関わらず、それでもどうしても出ない場合や、母親を失ってしまった赤ちゃんにとって非常に大切でなくてはならないもの。なければ赤ちゃんは死んでしまいます。
でも、そうではない母親と赤ちゃんまでが販売ターゲットになっているのが、現状です。残念ながら。
望む人が、望んだだけ母乳育児が出来る、それが一番だと思います。
そのためには、まずスタートが肝心です。次にオッパイのスタートに関する基礎知識を紹介します。
産後、母乳育児をスムーズに軌道に乗せるためには、おっぱいの仕組みについてもある程度理解していなければいけません。理解しているのとしていないのとでは、産後の1週間〜軌道に乗るまでの日々が、非常に精神的に辛くなり、挫折を余儀なくされる原因ともなるからです。
母乳は、赤ちゃんを産んだらすぐに・勝手に沸いてくるもの…と思われがちですが、そうではありません。その辺の誤解が、“遺伝によるものなどの体質のせい”という考え方にも結びつくのかもしれません。
人により個人差はありますが、大抵の場合、産後2〜3日頃より、急激に分泌が促進されてきます。
それまでの間に赤ちゃんが脱水症状・栄養失調に陥らないようにと、糖水やミルクを添加し、乳房には母乳マッサージを施して分泌されるのを待つのがこれまでの産院での一般的な対応でしたが、それは母乳の分泌を妨げる行為でもあります。
何故なら、産後すぐに頻回授乳を行った場合と、そうでない場合の一週間後の母乳分泌状態に、明らかに差が見られるからです。
出産直後から母乳量を確保するまでは、常に催乳ホルモン・プロラクチンの濃度を高く保つことが重要とされ、そのためにも赤ちゃんの吸い付きによる乳頭への頻回な刺激が必要です。
また、乳房マッサージそのものにはプロラクチン濃度を上昇させる効果は、残念ながら殆どありません(乳腺に古い乳が溜まるうつ乳や、断乳時のケアとしては良い効果があるそうですが)。
しかも、それが激痛だったりすると、余計母乳育児にマイナスイメージがついてしまったりすることだってあります。。
ちなみに私、死産後にオッパイが張って出てきたんですけど、その際に
「止めるためには搾る!」
と、かーちゃんにグイグイと揉まれて、乳腺を傷つけて乳首から血が出てきたことがあります……(-_-;)メチャクチャ痛かったよ。。。
なので、よほど手技の技術が優れた助産婦さんでないと、危ないっす。
そもそも乳房マッサージって、日本独特の文化なんだそうで、マッサージ無くしては母乳の分泌確保が難しいのであれば、外国の人々は母乳育児は不可ということになっちゃいますよねぇ…
…話がちょっとそれましたが、そういうわけで産後1日目から母子同室とし、赤ちゃんが欲しがるたびに授乳をすることが望ましいとされています。
一日あたり最低8回、多い場合は20回もの授乳を行うことになるでしょう。勿論、いくら頑張っても始めの数日に分泌される初乳はごくごくわずかな量ですが、この初乳には上でも述べたように感染から赤ちゃんを守る免疫物質が高濃度に含まれているのです。
また、これまでの一般的な指導による授乳の仕方以上に乳首を刺激されますから、プロラクチン・オキシトシンが多量に分泌され、放っておいた場合よりも母乳の生産量は早い段階でより豊富になります。
頻回授乳を繰り返していると、おっぱいの最初のリズムが出来上がり、分泌量が充分になると、プロラクチンは多量には必要なくなり、授乳時間や授乳間隔にとらわれない「自律授乳」で、その後も分泌量は確保されることになります。
ちなみに分泌量が少ない時期に際し、赤ちゃんはちゃんと胎内で次のような準備をしてきていることが分かっています。
■予定日が近づくと、胎児は水分摂取量を増やし、産後の母乳分泌量の少ない数日間に備えている
■生まれてすぐの新生児は、栄養失調にならないために皮下脂肪を十分に備えている
■体の各所に高カロリーを発生する褐色脂肪細胞があり、寒さに対して効率的に熱を作り出し、体力を保つ
これを、母乳育児支援団体の間では
「赤ちゃんは水筒とお弁当と懐炉を持って生まれてくる」
と表現されています。
よって、本来画一的に産後すぐに糖水やミルクを足す必要はないことになります。
不必要に悩まず、このとき重要なのは“高濃度の免疫を含んだ、わずかに分泌される母乳を飲ませること”と、“その後の分泌量を確保するために乳首に頻回刺激を与えること”です。ひと時の試練と思って、赤ちゃんと乗り切りましょう。
但し、ときには低血糖など医学的適応が必要な場合、母乳分泌が3日以上経ってもなかなか増えない場合、母親の精神的消耗が著しい場合など、糖水やミルクに頼らなければならないケースもあります。
ですが、医学的適応の場合にしても分泌量の増えがイマイチな場合にしても、実質10%未満、ごく稀です。母乳分泌量確保に関しては、遅い人は1週間ないし1ヶ月かかることもあるそうですので、まずは「出る」と信じて取り組むことが大切だと思います。
尚、覚えていて欲しいことが2点あります。
『中には上記の通り頑張っても、やはりどうしても出ない人・足りない人がごくわずかだがいる』・・・ということです。
万が一、自分がそのケースに当てはまるとしても、自分自身を責める必要はありません。
ここで言いたいのは、大切なのは「母乳」という液体だけではなく、「母乳“育児”」です。完全母乳栄養でなくても、母乳育児そのものを楽しむことが重要なわけであって。
(『ミルク育児中のママへ』参照。)
また、万が一ここに記載したような対応が産院などで得られなかったとしても、いくらでも遅れは取り戻すことは出来ます。遅れれば遅れるほど、必要な労力は比例して増えてしまいますが、産後3ヶ月でミルクだけだった、という方も問題なく母乳だけに戻した、ということは珍しくありません。
退院後、こういった面で不安がある場合は、自己判断で焦ってミルクを足してしまわずに、まずは理解ある母乳外来窓口や助産院、母乳育児支援をしているボランティアに、是非相談をしてみましょう。
あ、勿論ここでもOKです(笑)。
(2003.06.12 記) 2006.10.24 一部修正・加筆
参考:『母性を育む―ソフロロジー式出産と母乳育児』…日本評論社 岡村博行・著
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